KOBE ART MARCHE

Yurika Hashimoto meets KOBE ART MARCHEYurika Hashimoto meets KOBE ART MARCHE

「KOBE ART MARCHÉ」と同時開催される公募展「Artist meets Art Fair」は、若手アーティストの新たなステージへの挑戦を後押しするプログラムとして開催を重ね、多くのアーティストが、神戸から広いアートマーケットの世界へと羽ばたいていきました。
今回は、2025年開催の第10回 「Artist meets Art Fair」一般枠で入選された橋本百合香さんにお話を伺いました。応募に至った背景、入選作について、そして応募を検討している方へのメッセージなど、さまざまなお話をお聞きしました。

Yurika Hashimoto meets KOBE ART MARCHEYurika Hashimoto meets KOBE ART MARCHE

応募のきっかけは何でしたか?
応募当時はまだ学生で、卒業のタイミングで発表の予定がなく、少し焦りを感じていました。そこで、「少しでも発表の機会を作りたい」と思い、レンタルギャラリーで個展を開催しました。

その個展に、「KOBE ART MARCHÉ」に出展されているギャラリーの方が来てくださり、お話する機会がありました。その際に「Artist meets Art Fair」の存在を知り、「これが何かにつながるきっかけになるかもしれない」と思ったことが応募の決め手となりました。
入選の知らせを受けた際のお気持ちはいかがでしたか?
正直、ほっとした気持ちが大きかったです。

入選が決まる前までは、3月や4月に少し展示の予定はあったものの、関西ではまったく予定がなく、「とりあえず上半期に一つ展示の予定が入った」という安心感がありました。

学生の頃は作品発表の場に声をかけられることも少なく、必死で次の機会を探していたので、入選の知らせはとても嬉しかったです。「Artist meets Art Fair」での入選が決まったことで流れが生まれ、その後も立て続けに展示の予定が決まっていき、重なっていった感覚もありました
入選作品のコンセプトや制作時の思いを教えてください。
学部時代から修士前期までは、写実的でオーソドックスな日本画に取り組んでいました。支持体から変えてみようと西洋絵画の古典技法である白亜地(石膏系の下地)に自分がずっと使っていた岩絵具を用いて描いていましたが、当時は画材の扱いに苦戦し自分の表現にも迷いを感じていました。

転機の一つとなったのが、ある公募展への出品です。そこでポップで愛らしい作風に挑戦し、「うまく描こう」とする意識を思い切って手放しました。その結果、殻を破るような作品『きになるあのこ』が生まれ、自身の制作に新しい風が吹き込みました。

さらに、2022年11月から翌年2月まで東京国立近代美術館にて開催されていた大竹伸朗展を拝見し、コラージュという表現の可能性に衝撃を受けました。作品に取り入れ、これまでの画風から大きく舵を切るきっかけとなりました。苦手意識のあった白亜地を使い続けながらも、新たな表現方法を積極的に探究するようになったのです。

こうした経験の積み重ねが、素材や技法への探究心を制作の中心に据える現在のスタイルへとつながっています。今では、それらは作品に欠かせない、大切な存在となっています。
「KOBE ART MARCHÉ」での展示で印象に残ったことはありますか?
普段のギャラリー空間とは異なり、ホテルの客室という限られた環境で展示する経験は、とても刺激的でした。釘が使えないなど制約は多かったのですが、その分、展示に対する発想や工夫が求められ、学びの多い場となりました。

特に搬入時、木材を用いるなどして美しく展示を仕上げていくギャラリー関係者の皆さんの姿を間近で見られたことが印象的でした。制約の中でも作品を最良の形で見せようとするプロフェッショナルな技術と情熱に触れ、感動しました。

アーティストは作品を完成させることに意識が向きがちですが、作品が最も輝く見せ方を追求するギャラリーのこだわりと視点を知り、私自身にとって大きな刺激となりました。この経験は、制作だけでなく展示まで含めた作品の在り方を考える重要なきっかけになりました。
「Artist meets Art Fair」をきっかけに展示が決まったとお伺いしました。どのように話が進んだのでしょうか?
川田画廊さんからお声がけいただき、来年7月に個展を開催することが決まりました。とてもほがらかに「うちで全然やっていいよ」と言ってくださったのが印象的でした。かしこまった感じのイメージでしたので、緊張していた私は安心できました。

また、大雅堂さんからも2027年に個展をお誘いいただきました。大学院修士1回生のときに、卒展シーズンのオープンスタジオで屏風の作品を偶然見てもらっていたこともあり、気にかけていただけていたようです。予定が入ることの喜びを改めて感じています。

一度だけではアーティスト自身のことを完全に知ってもらうのは難しいので、興味のある画廊には何度も声をかけることが大事だと思っています。

今後の予定としては、12月に芝田町画廊さん(大阪)でのグループ展、来年上半期には2月にギャラリー恵風さん(京都)で、そして7月に川田画廊さん(兵庫)で個展が控えており、しっかり作品を作らなければと思っています。
今後の制作について、どのような展望をお持ちでしょうか?
大学では、素材と技法を徹底的に研究されている恩師のもとで学びました。周りの先輩方も作品のクオリティや情熱が非常に高く、憧れながら修士2年間を制作に費やしました。その経験を通して、画材や技法へのこだわりは自分にとって欠かせないものになっています。

恩師はとても厳しい方で、制作そのものだけでなく、作品に向き合う姿勢や考え方まで丁寧に指導してくださいました。当時の私は外の世界をあまり知らず、周囲の環境が当たり前だと思っていたのですが、現在大学の画材店で働く中で、他のアーティストの制作の様子を伺う機会が増え、価値観の違いを強く感じるようになりました。

特に、画材にこだわらず安価なものを無造作に使う方も多いと感じています。安価だと手には取りやすいですが、顔料の含有量が少なく耐光性に問題があったり、プロユースとしては十分ではないことがあります。
その結果、作品の品質が保証できなくなる可能性にも繋がってしまいます。

私は、画材メーカーの努力や工夫も間近で見させてもらってきたので、ただ絵を描き、発表して終わるだけでなく、作品を自分の手元から離れた後もクオリティを担保しながら、長く制作を続けていきたいと思っています。また、展覧会は勿論たくさんあるほうが嬉しいですが、手に負えなくなってクオリティが低くなってしまったり、作品が似通ってしまうと何の為に絵を描き続けているのか分からなくなってしまいそうなので、研究と制作のバランスも大切に考えていきたいです。
最後に、他のアーティストへメッセージをお願いします。
学生のころから、絵を描いて終わりにせず、いかに作品をより魅力的に見せるかを考えていました。額縁をつけたり、作品の側面を整えたりといった細かい部分から、普段使わない画材を試してみることまで、できることは意外とたくさんあります。

画材について疑問があれば、学校という教育機関以外にも画材店で聞くことはできますし、納得いかなければ直接メーカーに問い合わせてもいいと思います。昨今では様々な場所で画材フェスが開催されており、メーカーの担当者と直接話して新しい商品を試すこともできます。

岩絵具や油絵具、伝統的な画材も含めてさまざまな表現方法を自分なりに追求することが大切です。
「分からない・めんどくさい」という理由で楽なほうに走り、過去の絵師達が作品に残してきた技法を試さないのはとても勿体ないと私は思います。
名画がどうして何百年も残り続けているのか、そこには当時の絵師たちの工夫や技術がたくさん施されています。

一方で現在の画材メーカーも限られた資源や制約の中でよりよい製品を作っています。絵を描き、アーティストとして活動していきたいのであれば、常に様々な手法や素材に挑戦して、自分の表現の幅を広げてほしいと思っています。

ARTIST PROFILE

橋本 百合香さん

1998年広島生まれ。2024年京都芸術大学大学院修士課程美術工芸領域日本画分野修了。「日本画」というジャンルの固定観念を打破する表現を目指し、偶然性の高い差異が現れるコラージュ技法や箔を用いて現存する戯画や奇想画を参考に現代の日本人が失ってしまった心豊かな感覚を取り戻すことができる作品づくりを心がけている。母はブラジル生まれの日本人であり、作者が幼少期の頃訪れた海外の街並みや文化に思いを馳せ、日本人が描く特異的な表現の根底とは何か日々探りながら制作をしている。

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