「KOBE ART MARCHÉ」では、次世代を担うアーティストの発掘と支援を目的とした公募展『Artist meets Art Fair』を開催しています。入選者には「KOBE ART MARCHÉ」会場内での展示や、出展ギャラリーとのマッチングといった特典があります。多くのアーティストがこの公募展の入選をきっかけに、その後のさまざまなアーティスト活動につなげています。
今回の「Stories After Art Fair」では、2024年の第9回「Artist meets Art Fair」の一般枠で入選した岩本依留羽さん、岡優七さん、Junsei Ohさんに、応募のきっかけや展示の様子、その後のご縁についてお聞きしました。
- 「Artist meets Art Fair」に応募したきっかけを教えてください。
- 岡
ギャラリーで発表をはじめて間もない時期に、自分にとって最初のお客様に教えていただきました。作品をオーダーしてくれたアートの世界に詳しい人が言ってくれるのだからやってみようかなと。それまでは私はアートフェアに行ったことがなくて、「KOBE ART MARCHÉ」(以下KAM)のことも全く知らず、その時にホテルで作品を売るアートイベントだと教えてもらいました。
Junsei
私がアートの活動を始めたのは2023年の夏頃で、それまでファッションの世界で活動していました。友人に誘われて、服の一部をアート作品として展示してみたら楽しくて。本格的にアートの活動を始めた翌年の1月に「Artist meets Art Fair」の広告をInstagramで見つけました。作品画像の提出だけで、気軽に応募できそうだったのでやってみようと。
自分はまだ駆け出しのアーティストでしたが、自分のキャリアというか経歴に何か書くことが必要だと認識していたので、もし入選できたら結構良いアピールになるんじゃないかと思って応募しました。
- 岩本さんはどうして応募しようと思われたのでしょうか。
- 岩本
私は以前からアートフェアに出品してみたいと考えていて、公募サイトで「Artist meets Art Fair」を見つけて応募しました。自分の作品の価格帯を考えると、ただ展示するよりもマーケットとして確立している場で自分の名前を広めたいという気持ちがありました。
他の公募展にも参加していますが、「Artist meets Art Fair」はアートフェアで作品を展示できて、そこには多くのギャラリーが出展しています。アートフェアに出展しているようなギャラリーと繋がるにはどうすればいいかを考えていたので、そのチャンスが掴めそうな公募だと応募しました。
- ギャラリーと接点を持てるというのが、大きな動機になったということですね。
- 岩本
大学をでてから作家として活動しようとしていたにも関わらず、自分の作品を発表する機会をどのようにすれば良いかが分からなくて。KAMで展示できる公募展「Artist meets Art Fair」を見つけて、自分が求めてたものはこれかなと思いました。
実際にたくさんの人と繋がって、ご縁ができたので、「Artist meets Art Fair」に入選して良かったと思います。ギャラリーの方はもちろん、今回同時に入選したアーティストの皆さんともご縁ができて、KAM後に皆さんの展示に行って作品を見て、ご活躍を知ることができたのも嬉しかったです。これまでの自分の知っている以外の世界が広がりました。
- KAMに参加してみた感想や印象に残った出来事があれば教えてください。
- Junsei
私はKAMのお客様はきちんと作品について知りたいという方が多いと感じました。ポートフォリオを全部見て、真摯に説明を聞いてくださる方が多く、嬉しかったですね。
KAMのようなアートフェアでの新人アーティストの展示は珍しいですよね。駆け出しのアーティストからしてみると、アートフェアに参加できたことはとても良い経験でした。普通アートフェアに参加するには出展ギャラリーの代表作家として選ばれる必要があるので、簡単に参加できないと思います。
会期中は他のブースをめぐって、ギャラリーの代表の方と話すことができたのもよかったです。他のアートフェアではスタッフの方だけがブースに滞在する場合が多い気がしますが、KAMで直接話すことができたおかげで展示の機会に繋がって感謝しております。
岡
自分は3日間続けて在廊した体験が一番印象的でした。これまでは学生だけど頑張ってるねとか、若いから応援してあげようみたいな、作家と学生の間のような扱いを受けることが多かったんです。でもあの場では、何十年もキャリアがある作家さんと同じように1人のアーティストとして扱われるので緊張した反面、お客さんに自分もそういう目で見ていただけて嬉しく感じました。
岩本
私も他のギャラリーのアーティストと大差なく来場者の方々に作品を見ていただけたのは、新人としてすごいありがたかったなと感じました。
あと海外の来場者の方とコミュニケーションをとることができたのが良かったです。いつか海外でも発表したいと思っていますが、日本にいる中で繋がりが持てるような場は本当にありがたいと感じました。特にJunseiさんと同じ部屋にいて、サポートいただいたのも心強かったです。
- 会期中、入選者同士で協力されたのですね。各部屋(2024年は2部屋で展示)で入選者の皆さんがコミュニケーションを取られていたのが印象的でした。Junseiさんが撮った動画を、岩本さんがシェアされてましたよね。
- Junsei
お客様がいらっしゃらない時間は、皆で話をしていました。2日目になると立ちっぱなしだと疲れてくるのでみんなで励ましあって、あと2時間頑張ろうみたいな(笑)。自分としては皆さんと戦友のような気分でした。
岩本
私のいた部屋はJunseiさんが中心となっている印象がありました。お客さんが来たらアテンドしてくださったりとか、自分が席を外しても説明してくださったり。
- 岡さんはその隣の部屋でミッドキャリア枠の蘭二朗さんとコミュニケーションされていた印象があります。蘭二朗さんのような世代のアーティストと話す機会ってありますか?
- 岡
蘭二朗さんからしたら、私はほぼ子供の年齢くらい。多分、親子みたいな年齢差だから優しくしていただいたのだと思います。
私にとって、蘭二朗さんはちょうど大学の先生ぐらいの年代です。普段は全然近づけないような世代の方と楽しくお話しができて新鮮でした。入選者の出口朝子さんも年上でしたが親しくなって、後日遊びに行きました。子供のような年齢の作家と一緒で不満に思われたらどうしようとか思っていましたがもちろんそんなことなくて。
- 出口さんも岡さんと年齢差はありますが、抽象表現という点では共通しています。
- 岡
そうなんです。抽象表現をしている同世代のアーティストが学校にもほとんどいなくて、話を聞いてみたいと連絡を取っていました。そうしたら美術館に行こうって言われて。
- 見に行かれたのは抽象画の展覧会でしょうか?
- 岡
それが仏像の展覧会(笑)。全然自分たちの表現と関係ないけれど、相手の世界観が見えて面白かった。先輩の知り合いが出来て嬉しかったです。
- KAMの後に繋がったご縁はありましたでしょうか?
- 岩本
はい。一番大きかったのはギャラリーMOSから金沢のアートフェア(KOGEI Art Fair Kanazawa 2024)に出品できたことでしょうか。他にも、以前からお世話になっていたギャラリーの方とレセプション会場で話す機会があって、そこから展示することになったり、思いがけない画廊からグループ展のお誘いを受けたりして、本当にたくさんの縁が繋がっています。自分が考えていたのと違ったような方向から声が来たので、有難いなと思いました。
- 「Artist meets Art Fair」がきっかけ作りの役に立てたんですね。
- 岩本
いや、もう役に立ったどころか、感謝以外の言葉がないです。公募で受賞が出来た一歩がなければ、2025年に展示する機会も全然なかったですし。あの時、公募に応募して本当によかったと思っております。
- ギャラリーMOSは以前からご存知だったのでしょうか。
- 岩本
はっきり意識し始めたのは2023年のKOGEI Art Fair Kanazawaです。その展示がとても素敵でした。知り合いが参加していたこともあって親近感も感じましたし、自分の作品にも雰囲気が合っているように思えて、このギャラリーからいつか作品を出品したいと思いました。
でもどうやって縁を繋げばいいのか。そう思った時にKAM2024でギャラリーMOSとやりとりできるようになって、今年のKOGEI Art Fair Kanazawaに出品したいと自分でアピールして、さらにその先の個展の話もいただきました。今度のKAM2025にも出品予定です。今は自分が目指してた方向へと行くことができて良かったと思ってます。
- 先日、Junseiさんの作品を京橋で見ました。
- Junsei
ありがとうございます。あの展示はTOMOHIKO YOSHINO GALLERYの企画です。代表の吉野さんとKAM2024のレセプションパーティで名刺交換したら展示のお誘いを受けて。初めてギャラリー企画の東京での展覧会に参加して、しかも2ヶ月にわたる長期の展示で良い経験になったし、嬉しかったです。
それ以外にも福岡のモノノアハレヲのグループ展にも参加させていただき、自分がお知らせした展示も見に来てくださって感謝しております。今年の予定としては、TOMOHIKO YOSHINO GALLERYの名古屋でのグループ展があって、他にも名古屋松坂屋で個展をする予定があります。
- 岡さんも展示が続いていますね。
- 岡
KAM2024会期中に、芝田町画廊さんにお声がけいただいて、今年の夏に個展をします。他にも神戸北野美術館で1/7まで展覧会に参加していて、それも「Artist meets Art fair」に入選したことが後押しになったように思います。
KAMでの展示はそれ以上に私の気持ちを後押ししてくれています。今までだったらまだ大学生だからやめておこうと消極的だったことに対して、KAMで展示したのだから挑戦してみようと思えて応募したり、自分から手を上げたりしています。そういう意味で入選したことが自分自身に影響を与えて、展示の機会が増えていますね。
- 自信に繋がったということでしょうか。
- 岡
一緒に入選した方がいろんな場所で展示しています。その公募展に入選できたのだから、自分も頑張ればできると思えるようになりましたね。
- 最後に、KAM2025に展示する機会の得られる第10回公募展「Artist meets Art fair」の募集が始まっています。これから応募を考えている人に向けてメッセージがあればお聞かせください。
- Junsei
岡さんが仰ってたように、入選すると作家として自信を持つことができます。ギャラリーとのご縁が繋がるのはもちろん、自分のモチベーションが上がるので、作家人生において入選は価値のあることだと思います。ぽっと出の、どこの馬の骨だかも分からないような自分を入選させていただいて感謝しております。
岩本
自分の中では応募する事で行動も前向きになったので、やらずに後悔するよりやって後悔する方が良いなと思います。結局のところ、やって後悔することなんて全然ないの で、少しでも応募する気持ちがあるならば積極的にどんどん応募するべきだと思っております。
岡
作家活動ってどういうことなのかよく分からないから、やめておこうとなりそうなんですけど、どちらかと言うと発表するということがよくわからない人ほど、「Artist meets Art fair」に参加すると学びが多いと言うか。経験浅いからやめておこうじゃなくて、そういう人ほど挑戦してみた方がいいと思います。
- そう言ってくださると嬉しいです。皆さん、今日はありがとうございました!
1992年愛知県生まれ。2016年東京藝術大学工芸科鋳金研究室卒業。2018年東京藝術大学大学院美術研究科工芸専攻鋳金研究分野修了。目には見えない心の中の事象を、作品として見える形にして残しておきたいという欲求を原動力に制作している。
2001年京都府生まれ。2023年大阪教育大学教育協働学科芸術表現専攻美術表現コース卒業。大阪教育大学教育学研究科高度教育開発専攻在籍中。「集積」「繰り返し」をテーマに、線のストロークや日本語の文字を積み重ねた抽象画を制作している。
中国で生まれ育ち、10歳で来日。立命館大学経済学部を卒業後に渡英し、ロンドン芸術大学(University of the Arts London, Central Saint Martins)でファインアート及びファッションデザインを学ぶ。幼少期に親とお寺参りに行った際の風景に美の根源があると気づき、それをコンセプトに制作している。